review 0058 : チョコレートグリーディー / CHOCOLATE GREEDY
【香水名】チョコレートグリーディー / CHOCOLATE GREEDY
【ブランド名】モンタル / MONTALE
【発売年】2007年
【製品ラインナップ・価格】オードパルファム 50mL 11,000円 (本体価格)
【香りのノート】オリエンタルバニラノート
【香りの構成】カカオ、バニラ、トンカビーン、コーヒー、ドライフルーツ、ビターオレンジ
※レビュアーが実際に試香した製品のみ記載しています。価格はレビュー当時のものです。
【オフィシャルサイト】
http://www.montale.jp/
モンタルは2003年にフランスで設立された比較的新しいニッチブランドです。現在のラインナップは100を超えていて、日本の公式サイトでは61の香りを購入することができます。創立者であるピエール・モンタルがブランドを立ち上げる以前、サウジアラビアにいた経緯から、特にウード(香木)を調合するノウハウを得意とし、パリのエスプリを掛け合わせたオリジナルの香り作りをしています。多くのラインアップにウードが用いられているので、新しいウードをお探しの方は、他では見つからないユニークなウードに出会えるかもしれません。
ボトルも特徴的で、光による劣化を防ぐためにアルミ製となっています。驚くほど軽量で、巾着がついているので、重いボトルを持ち運んだり、アトマイザーに入れ替えたりする手間がなく、携帯するのに便利です。美しいガラス製のデザインボトルが好きな方には物足りなさを感じるかもしれませんが、チャーム付きのストッパーも機能的で、ボトルのメタリックな光沢は都会的でモダンな印象です。
モンタルはフランス本国でも一切の宣伝をせず、調香師も公表していません。イメージづけられた広告や、有名な調香師の香りとなると、どうしても先入観が先に入ります。そういった先行イメージを追いかけるのも一つの楽しみですが、自分だけの「シークレット」を探し求める人に多様なラインナップを展開することで、出会える喜びを提供するというコンセプトをモンタルは掲げています。ニッチフレグランスの中でも、主流となる香料にこだわりながら、際立ってラインナップの数が多い、というのがモンタルの特徴です。
今回のCHOCOLATE GREEDYは、モンタルの中では数少ないウードを使用していないフレグランスです。ネーミングのGreedyは“貪欲”という意味ですが、まさにチョコレートの専門店に足を踏み入れたあの感覚を、何時間も味わうことができます。モンタルの他のラインナップと同様、香りの構成はシンプルで直線的、ほぼシングルノートと言って良いでしょう。
香りの印象ですが、まとった瞬間、焼き立てビスケットを取り出した時の、少し焦げたような衝撃があった後、苦みのあるオレンジがわずかに立ってくるのを感じました。それで思い出したのが、子供の頃好きだった、マーマレードジャムがのったチョコレートでコーティングされたビスケット。あまりに懐かしかったのでネットで調べたところ、ロッテから発売されていたジャフィというお菓子でした。名前の記憶はほとんどありませんが、知っている、という方は結構いるのではないかと思います。そのままオレンジが前面に出てくることはなく、私の肌の上では30分ほどで消えていきました。
その後、香りが肌に馴染んでビスケットの焼けるような匂いが落ち着いてくると、ミルクココアの粉末のような香りに包まれます。チョコレートというよりもカカオに近いです。食レポのようなレビューになっていますが、本物のお菓子の再現性が高い、美味しい香りです。ラストに向かって私の肌の上では、ドライフルーツの甘味が余韻を残していきましたが、砂糖の甘さとは違って、終始、重さは感じません。甘い香りですがつけ心地は軽やかですので、思った以上に使いやすいと思います。
私は個人的にお菓子やバニラに代表されるグルマンノートの香りが好きなので、「チョコレート」と銘打ったフレグランスをいくつか愛用していますが、一番本物のチョコレートに近いです。退廃的なようでメタリック感のある「エンジェル」(ティエリー・ミュグレー)や、都会的なピンクペッパーの効いた「ニューボンドストリート」(Bond No.9)、ローズやラムで彩られたセクシーな「グルマンコキャン」(ゲラン)など、チョコレートの香りを活かした個性豊かで、癖のあるフレグランスとは異なり、美味しそう!と誰もが分かる多くの人が幸福感を感じる好きな香りです。ですが、これをフレグランスとして纏おうとした時に、好き嫌いは大きく分かれると思います。カジュアルに、そしてロマンティックに、一人でゆっくりtea timeのように味わうのも良いですし、大勢の人や恋人と共有する空間でも楽しめそうです。
性別、年齢は関係なく、チョコレートがお好きな方には、ぜひ一度手に取っていただきたいと思います。クラシックな要素や芸術的な深みのあるフレグランスではありませんが、誰もが知っていて、リラックスできる心地よい、そしてチョコレート過ぎて楽しくなる遊び心を刺激する香りです。
肌寒くなる秋から冬にかけて、またバレンタインの時期にもおすすめの1本です。
レビュアー 羽賀 香織 Kaori HAGA 2021年2月