”My beloved Fragrance 2023 今年の私の最愛フレグランス ” 発表です
街にイルミネーションが煌めき、その前で人々が笑顔で記念撮影する、今年もそんな季節となりました。
本年も ”My beloved fragrance 2023💓今年の私の最愛フレグランス” を発表致します。昨年から投票結果で決定した年間ランキングの発表ではなく会員様各自の、今年の “💓最愛フレグランス” として、順位や得票数では記しきれないその香水の魅力を存分に綴って頂いています。香水がその香りを纏う人と結びついたとてもパーソナルなものであるからこそ、この発表の仕方には意義があることとと思っています。香水の魅力とともに、会員様のその一年の様子が愛おしく感じられ、私自身もとても楽しみににしております。
そして、今年も私たちの心を打つ素晴らしい香水を生み出したパフューマー、ブランド、PR、販売員、フェア等を開催された百貨店、小売店、オリジナルのイベント企画を実現された香水販売店のオーナー、ディストリビューターの皆さま、そして評論家、ジャーナリスト、メディア、編集者の方々など、全ての香水に関わる皆さまの今年の努力に、改めて感謝申し上げます。
そしてご一緒にたのしく過ごすことができた、香水を愛する皆さまに心からお礼申し上げます。
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”My beloved Fragrance 2023 💓 今年の私の最愛フレグランス”
※今年もご投稿を受け付けた順番に掲載させて頂いております。
※掲載画像も筆者の方に撮影して頂いております。
【1】
私の今年の最愛フレグランスは
パルファン サトリの『Nobiyaka-ノビヤカ-』です。
今年は少し行動範囲が広がり
気持ちも一歩前に進んだためか
多くの素晴らしい香りとの出会いがありました。
その中でもNobiyakaは
ひっそりと静かに控え目に佇んでいるような存在でした。
ある時ふと目を向けると
いつも変わらずそこにいて
いつも変わらず優しく微笑んでいたのが
Nobiyakaです。
この透明感のある繊細なフローラルな香りは
けがれない無垢さから始まり
優雅にいつまでも寄り添ってくれます。
透明感のある香りと言うと
大人しい香りになってしまうこともありますが
Nobiyakaは強く主張しないのに
奥深くに確固たる芯を感じます。
希少で繊細なスパイスたちの効果なのでしょうか。
終始あたたかなキラキラとした光が
静かに弾けるように満ちているのです。
優しく穏やかで
繊細な煌めきのような香り。
自由でのびやかに毎日を過ごしたいと願う私が出会った
今年の最愛フレグランスです。
会員No. 00002122017 A 005 Mihoko NIWA
【香水名】ノビヤカ / Nobiyaka
【ブランド名】パルファン サトリ / PARFUM SATORI
【発売年】2023年
【パフューマー】大沢 さとり / Satori OSAWA
【香りのノート】オゾン・フルーティ・フローラル
トップノート:枇杷(ビワ)の花と実、梅酒、ダバナオイル、白桃ベース、ヘリオトロープ
ミドルノート:ジャスミンアブソリュート、ミュゲ、ナツメグオイル、ローズエッセンス、カモミールブルーエッセンス、Akaitoサフラン® アブソリュート
ラストノート:イリスアブソリュート、オリバナムレジン、L-ムスコン、サンダルウッド
【オフィシャルサイト】
https://parfum-satori.com/?pid=173354594
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【2】
今年の私の最愛香水 💓2023は『スペル オン ユー』です。
秋に新型コロナウィルスに感染し4日間においがわからない状態でした。
嗅覚がない生活がこんなに味気ないとは!
その間ひたすらもう一度じっくり香りを嗅ぎたいと願ったのがルイ・ヴィトン『スペル オン ユー』
オリエンタルでもシプレでもなくシンプルで繊細なフローラルを身体が求めました。
手に取ることはそう多くなかったのに、においがわからなくなったとたん頭の中がスペルオンユー一色になったのが意外でした。
初見ではただ「イリス全開ローズ」の印象でしたが、じっくり観察してみると上質な香料が使われていることに気づきます。
削ぎ落とした美しさ(処方)+上質な香料
モーツァルトのピアノ曲がシンプルで譜読みはしやすいのに難しく、粒立ちの良い美しい音を出せる人がいてはじめて素晴らしいきらめきを放つのに似ています。
バラから抽出されたローズアブソリュートやローズウォーターから動物の毛が濡れたようなにおいをごくわずかに感じるのですが、スペルオンユーからもわずかに「獣」を感じる瞬間があります。
でもそれが私にとってバラの生命を感じることができる喜びでもあります。
会員No. 00027072020 D 014 Ami MATSUGAKI
【香水名】スペル オン ユー / SPELL ON YOU
【ブランド名】ルイ ヴィトン / LOUIS VUITTON
【発売年】2021年
【パフューマー】ジャック・キャバリエ=ベルトリュード / Jacques Cavallier Belletrud
【香りのノート】フローラル
フィレンツェ産アイリス 、グラース産ローズ、ジャスミンサンバック、エジプト産アカシア、ムスク
【オフィシャルサイト】
https://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/products/spell-on-you
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【3】
2023年私の最愛香水
「FLAIR」のクリエイション
昨年から続く私のFLAIRブーム。サロパで展開されたFLAIRブースの賑わいは記憶に新しいところ。
どれか一本と問われればこちらでしょうか…
Room 1015 / ATRAMENTAL
パフューマーは
アン・ソフィ・べへゲル
サロパでのアン・ソフィとの雑談で「ROCK、聴くのも演るのも大好き」という話から
彼女が「それなら絶対これ!」と選んでくれたのが
『ATRAMENTAL アトラメンタル』。
意味は「インクのような、インクのように黒い、憂鬱…」らしいのだけれど
アン・ソフィは「Tattoo」にインスパイアされてこの香りを作ったらしいのです。
私なりのTattooの理解は、Tattooはその人自身を表すということ。矜持や心情、愛するものや生き様 etc.
ロックとTattooはある意味切っても切れない関係ですし
ATRAMENTALともそこで繋がるという…
しかもこのキャップは、ギターやベースに使うピックと同じ素材(恐らくセルロイド)でできているとのこと。
香りはちょっと拍子抜けするほど然りげ無く
爽やかなシトラススタート。
奥行きのあるシトラスは、絶妙にプラスされたカストリウムの仕事なのか
手前に感じるのはあくまでもスパイスなのですが
奥の方に潜むレザリーな香りもきっとカストリウム。
そしてここにもアクアノートが…今年はアクア、マリン、オゾンあたりを大いに見直した一年で、来年は是非にもこれを掘り下げたいと目論んでおります。
最後に
アン・ソフィがボックスに書いてくれたメッセージ
「Kaori & Anso♡ forever rock」
ずっとROCKだぜってことの他に、ずっと好きなことやろうねってことだろうと理解しております。
Room 1015 というブランドそのものがかなりロックみ強いので(笑)
どうぞ NOSE SHOP さんのサイトで検索してみてください。
Forever ROCK
Forever FRAGRANCE
会員No. 00006122017 A 006 Kaori TANAKA
【香水名】アトラメンタル / ATRAMENTAL
【ブランド名】ROOM 1015 / ルーム テン フィフティーン
【発売年】2015年
【パフューマー】アン・ソフィー・べへゲル / Anne-Sophie Behaghel
【香りのノート】シトラススパイシーレザリー
トップノート:ベルガモット、レモン、シスタス、アクアノート
ミドルノート:カルダモン、ブラックペッパー
ラストノート:ドライウッド、サフラン、スデラル、カストリウム
【オフィシャルサイト】
ROOM 1015(英語)
https://room1015.com/fragrances/12-32-atramental
NOSE SHOP
https://noseshop.jp/products/147360335
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【4】
今年の私の最愛香水♡2023
今年は3年振りにマスクの義務がなくなり
まだまだコロナの勢いは止まりませんでしたが
それでも義務化から自己判断になったことに
大きな解放感を味わいました。
仕事でも厚労省から事業所の判断に任せると
お達しを受け、
業務上如何なものかと思いながらも
私はマスクを外す選択をしたのでした。
3年ものマスク生活は、やはり嗅覚、
香りの好みに変化をもたらし、
思い切り外の匂い、香りを吸い込む事に
鼻の疲れを感じたのです。
マスクの中での呼吸、
嗅覚が捕らえるのは少ない香りの情報だったものが
さていよいよ思い切り香りを楽しめる、となった途端
今まで好きであった香りに疲れを感じたり
強さを感じたり…
そんな中、どんな時も安心して纏えたのが
ジャドールロー
デュマシーの作品の方です。
今年は、ディオール専属調香師がクルジャンに変わり
少しづつ前パフューマーのデュマシーの作品が
廃盤になっていきました。
その中でも、こちらのローは長年愛した香りなので
とても寂しく悲しくもあります。
そんな2023年、デュマシーへの敬愛も込め
私の最愛香水とさせていただきます。
会員No. 00003122022 G 016 Yoko OKAZAKI
【香水名】ジャドール ロー / j’adore L’Or
【ブランド名】DIOR / ディオール
【発売年】2017年
【パフューマー】フランソワ・ドゥマシー / François Demachy
【香りのノート】オリエンタルフローラル
ローズ ドゥ メ、グラース ジャスミン、イランイラン、チュベローズ、トンカビーン アブソリュート、タヒチアン バニラ アブソリュート
【オフィシャルサイト】
掲載なし
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【5】
今年最愛の香水は、先日パリで出会った、GUERLAIN VANILLE PLANIFORIA EXTRAIT 21 を選びます。シャンゼリゼ通りのゲラン本店は、私にとって夢のような世界です。美術館にいるような気分で、煌びやかなクリスマスカラーのディスプレイを眺めていました。スタッフの方に、好きな香りはヴァニーユとローズだと伝えると、L’ART ET LA MATIÈREの新作から2つを紹介していただきました。
【ROSE CENTIFORIA EXTRAIT 1】
【VANILLE PLANIFORIA EXTRAIT 21】
数字の意味、何のナンバー?と尋ねると、「これはゲランの香水を作る時の大切なナンバーたち」だそう。
「黄金比のようなもの。ナンバーからインスピレーションを受ける事ってあるでしょう。ゲランにはゴールデンナンバーがそれぞれにあって、そこから深く、強く、この香りたちが出来上がる。このエクストレシリーズは、本当に少しだけ、私たちの肌に小さくのせるだけで、とても永い時間、輝いてくれるの。」そう説明してくださったように、私は解釈しました。
【VANILLE PLANIFORIA EXTRAIT 21】を香った時、一目惚れをしたように感じました。
2019年に【SPIRITUESE DOUBLE VANILLE 】という香りを購入して、冬はこのゲランのヴァニーユがずっとお気に入りだったのですが、エクストレ21は、同じヴァニーユでも、受けるインスピレーションが全く違いました。
スピリチューズは、甘くて美しいヴァニーユ、ラム酒やスパイスのような印象を受けます。
プラニフォリアは、香った瞬間のイメージは、【冬、レザーのソファ、甘さと華やかさ】でした。
帰国するフライト中、いただいたムエットを片手に、「私はこの香りを纏って、どんな日を過ごしたい?どこへお出かけして、誰に会いたい?」と、心に聞いてみました。「良い香りだね」「君に似合うね」と言ってもらえたなら、どんなに嬉しいだろうと、考えてわくわくしていました。【VANILLE PLANIFORIA EXTRAIT 21】は、大切な日にお迎えしたいと思います。
【風の時代】へと移り変わり、軽やかに生きていこうという流れがやってきた2023年。けれど、いざ「好きな事を自由にどうぞ」と言われると、自分が本当に望んでいる事が何なのか解らず…「心の声に耳を傾ける」というのが、どれ程に難しいか感じた1年でした。
香水を「シュッ」とする、一瞬舞う粒子のように、「自分の本当の気持ち」というのはすぐに見えなくなってしまうように思います。
私たち一人ひとりも、きっと粒子でできていて、色んなエネルギーを受け取って生きているのなら、香水は【風の時代】の流れに乗っていく為のマストアイテムではないでしょうか。
好きな香水を纏う事で、自分の望む世界を思い出していきたいです。
私の人生にいつも、ゲランがそばにいてくれたら幸せです。ヴァニーユのゴールデンナンバー【21】からインスピレーションを受けながら、2019年から2023年の思い出を香りと共に振り返ります。そして、「自分の心の声」を大切に、新しい年・時代へ進んでいけたら嬉しいです。
地引由美先生と、香水を愛する皆さまと、素敵な時間を共有させていただきました一年に、感謝致します。
会員No. 00015042023 G 019 Yuko SAKAKIDA
【香水名】ヴァニーユ プラニフォリア エクストレ 21 / VANILLE PLANIFORIA EXTRAIT 21
【ブランド名】GUERLAIN / ゲラン
【発売年】2023年
【パフューマー】ティエリー・ワッサー / Thierry Wasser
【香りのノート】グルマン
スパイスノート、ヴァニラ、ムスク、オポパニン(アンバーアコード)
【オフィシャルサイト】
ゲラン
https://www.guerlain.com/jp/ja-jp/p/lart-la-matiere-vanille-planifolia-extrait-21
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【6】
2023年、この1年は仕事のポジションが変化し、生活リズムも激変した1年だったと言えます。
医療の安全とハラスメントという分野を専門に医療機関の中で従事することは、
責任の重さや多くの方々と面談する機会が増えることへの緊張感、不安感が高まり時に体調が不安定になることもありました。
香りを纏わないことはほぼなかった私ですが、新たな立場となって職員の方々と接する状況から
香りについてご指摘を受ける場面があったり、組織の人間関係上、配慮しなくてはならないと思える場面などもあり、
朝の身支度の習慣も見直すこととなりました。
がしかし、なかなか習慣は変えられません。ふとした瞬間にBodyに香水を纏ってしまうのです。
それがOBVIOUS UN BOIS でした。
しばらく訪れていない山小屋のログハウスで、静かに薪ストーブの燃える音と鳥のさえずりをBGMに過ごす時間を思い出し癒されるのを感じました。
ウエストのあたりに纏うので、ほのかに自分の体温で香るのを感じます。癒しと共に気合が入り長時間のデスクワークもはかどりました。
そして週末は、今から1年前にデパートのポップアップで手にした
Maison Francis Kurgjian Paris 中でも L’HOMME A LA ROSE は
薔薇を欠かさず生けてきたのですが、時間に追われ帰宅時間も遅くなり食事を済ませてベッドに入る。
そして約9時間後にはまたデスクワークをしている。
そんな毎日でお花屋さんに行くのもままならず。すごく求めていた香りがそこにあった気がします。
手折ってきたばかりの瑞々しいバラに顔を近づけて深呼吸し、日が差し込むリビングでリラックスできるひと時を感じました。
どちらの香水も大変気に入って新しいものを追加しました。
2023年は不安とプレッシャーが大きく感じる始まりでしたが、これらの香りによって心の安定を助けられ日々を過ごすことができたと言えます。
会員No. 00017122017 A 008 Ayako KIMURA
【香水名】アン ボワ/ UN BOIS
【ブランド名】オブヴィアス / OBVIOUS
【発売年】2020年
【パフューマー】アンヌ=ソフィ・べハーゲル / Anne-Sophie Beharghel、アメリ・ブルジョワ / Amélie Bourgeois
【香りのノート】フレッシュ ウッディ
トップノート:イタリア産ベルガモット、アジア産ブラックペッパーエッセンス
ハートノート:アンブロクサン、バージニア産シダーウッドエッセンス
ベースノート:インド産パピルスウッド、マレージア産ガージャンバウムエッセンス、ハイチ産ヴェチバーエッセンス
【オフィシャルサイト】
ART EAU
https://arteau.jp/products/un-bois
【香水名】ロム ア ラ ローズ / l’homme À la rose
【ブランド名】フランシス・クルジャン / Francis Kurkdjian
【発売年】2020年
【パフューマー】フランシス・クルジャン / Francis Kurkdjian
【香りのノート】フローラルウッディ
グレープフルーツ、ブルガリア産ダマセナローズ、ウッディノートへ、アンバーウッディ
【オフィシャルサイト】
L’ATELIER DES PARFUMS
https://latelierdesparfums.jp/products/l-homme-a-la-rose-edp-spray
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【7】
■ なぜ香水を迎えるのか?
第一にはその香りが好きだから
その時の自分の香りとしたいから
手元に置いておきたいと強く思う時(使いきれないとわかっていても)
■ いつ香水を迎えるのか?
新製品が出るタイミングや
旅先で出会った時など
どうしてもその香りが必要だと感じた時
人によってその理由は色々でしょう。
2023年は久しぶりに伊勢丹 新宿店のサロン ド パルファンのブースで接客をさせて頂きました。輸入代理店のART EAU様が取り扱いブランドの多くの作品の調香を担当したパリの独立系パフューマースタジオ、 ”FLAIR(フレア)” の二人の調香師、アメリ・ブルジョワとアンヌ=ソフィ・べハーゲルを招聘され、彼女たちと共にたくさんのお客さまと触れ合うことができました。
お二人の様子を見ながら、また、お客さまとお話ししながら、フレグランス界の大きな変化を感じました。売る側、買う側、どちらのプレイヤーも楽しんでいて、なんというか、屈託や重さがない。良いことだと思いました。
アメリとアンソ(アンヌ=ソフィのことを皆、こう呼びます)、明るくパワフルにブースに立つお二人の香水を手元に置きたい、と思うのに時間はかかりませんでした。アメリのクリエーションは『フルール ドゥ サーブル』を。アンソのクリエーションは『ネヴァーモア』を。これまで『砂』『大地』『水』『ソルト』というワードが出てくる香り、いわゆる『アクア』『オゾン』のノートを身に纏いたいとは思わなかったのですが、この二つはその要素をたっぷりと含んでいるのに、とても魅力的です。中でも『ネヴァーモア』が本当に美しくて。
年齢を重ねるにつれて、失ったものを数えることが増える、とそんなことを思う今年。この香水のタイトルにグッときました。『ネヴァーモア=もう二度と』。詩人、エドガー・アラン・ポーの喪失の悲しみをテーマにした作品『大鴉』の後半で繰り返されるこの言葉は最初は沈み込む様な重みを伴って、次第に軽く天上へ向かうためのまじないのように聞こえてきます。
■ なぜ香水を迎えるのか? という問いの答えにもう一つ
香水のその香りが表現するテーマに惹かれて
ということがあります。絵画のように、音楽のように、表現するテーマがありタイトルがつけられるのが香水。人生のある時期の自身のテーマと、重なり合う香水が見つかることほど幸せはないでしょう。ということで、香りが表現するテーマが今年の私の思いと重なり、そして、アンソの調香でフローラルオゾンの香りの持つ美しさに開眼させてくれたフラパンの『ネヴァーモア』を今年の私の最愛香水♡に選びます。
※よろしければ…エドガー・アラン・ポーの『大鴉』で繰り返される “NEVER MORE” という言葉の迫力を ”The Raven (Christopher Lee)” のURLから体感してみてください。https://www.youtube.com/watch?v=BefliMlEzZ8&t=248s
La causette parfumée 代表 Yumi JIBIKI
【香水名】ネヴァーモア / NEVERMORE
【ブランド名】フラパン / FRAPIN
【発売年】2014年
【パフューマー】アンヌ=ソフィ・べハーゲル / Anne-Sophie Behaghel
【香りのノート】ライトフローラル ウッディ
トップノート:セリ、フローラルオゾン、アルデハイド
ハートノート:ローズオキシド、ローズドメイ、ダマスクローズ、ボンデッドワイン、ヘディオン
ベースノート:アンブロクサン、サフラン、パチョリ、アトラス産シダー、ホワイトムスク、アンバーウッド
【オフィシャルサイト】
ART EAU
https://arteau.jp/products/nevermore
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【8】
「絡みつく香り」
口紅より早く香水が初めての自分の化粧品だった。
ただただ好きで、仕事にしたり辞めたり。
Covid-19 禍も相まって扉の重かったラコゼに今年はやっと会員に入れていただき、新しい香りへのアプローチが始まった。
定期的に香りの知見を高め合うおしゃべり会。
地引由美先生のテーマ建てが、優等生すぎるくらい満遍なく確かで、その目利きの正しさがあってこそのびのびおしゃべりして遊べるのである。自発的に手を伸ばさない香りにもすんなりと手を伸ばして、いかに自分のプレジャッジに囚われているかも痛感する。
語れば語るほど、言葉を帯びるほど、香りは芳しくなる。改めて香りの楽しみ方に気付かされた1年。
さて今年の一本。
「その日のベスト」はほぼ間違いなく選べているのだがannual best fragranceは難しい!
でもこれを綴りたい。
パピルス モレキュレール オードパルファム(MAISON CRIVELLI )
実は、伊勢丹新宿の香りの祭典「サロン ド パルファン」に初めて行ったのが2022年である。
香り好きにして人混み苦手なのでついつい敬遠してしまい、でも、その時はなぜか「閉店間際ならいいかなー」と19:40くらいに行った。
それでも混雑している会場内で、放たれるオーラに引き寄せらるよう香りと文具のエキスパートK氏に遭遇。彼のテンションに勝手に巻き込まれて「一緒に香り選んで」と道連れにし、EDIT(h)Jardin des mots を買い(家族の方が似合ったので家族が愛用中)、Boadicea the Victoriousに圧倒され、閉店間際でもSATORIさんのブースはお客さまに囲まれて全貌見えず、長蛇の列だと噂だったのクリヴェリが奇跡的に空いている。「行くわよっ」とKさんの掛け声でカウンターに行き、なんと20:30まで粘って3本選ぶ(良い子は真似しないでね)。Kさん、閉店過ぎていても、全く落ち着き払って丁寧に選ばせてくれたスタッフさん、ありがとう。
香水に限らないかもしれないけれど、いつ出会い、誰とどんな語らいをくぐって選ばれるか、全て含めて買い物で、それが好き。
さて、迎えた3つとは、
・CITRUS BATIKANGA…やっと手元に置いておきたいシトラス系が見つかったと思ったのだが、ひと冬寝かせて春先に開けても、なぜか家族の方が似合ったので彼が愛用中。悔しいけどあれこれ買ってしまう私にはきっと善きこと(自分に似合わなくて、似合う人を見つけてプレゼントしてしまうことはよくあります)
・BOIS DATCHAI …好きなんだけど、きっとリピートするけど常備菜のような落ち着き。これからの香り。
そして
・PAPYRUS MOLECULAIRE
クリームよりもう少しサラッとしたヤギのミルクの優しさとレザーのゴワッとした肌触りが絡みつく。香りの爪があって私に引っかかるような、香りに「護られている」という安心感を憶えたのは初めてかも。『シガーを吸いながら、パピルスの布を織る女性と
遭遇した体験から生まれた香り』とのことだが、シガーの馥郁たる細い煙筋が弱い日差しに溶け込んで織り込まれていく妄想まで膨らむ。私の肌との相性かもしれないが、この香りは通常の1/3くらいの使用量で十分に香りが保たれる。コリアンダーとサンダルウッドがまろやかさにスパイスを添え、時間が経つとやや華やかさまで帯びてくる。彩鮮やかではないのだが、香りの万華鏡というか、日々、気候や合わせる服によって香りたちの表情を変える、ずーっと飽きないのだ。季節が進んで暑くなったら重くなるかと思いきや、日差しの熱量と対峙する香りとなる。どんなに言葉を尽くしても明日の香りは私のボキャブラリを凌駕する。
大好き!と無邪気に愛でるより、これはとんでもないものに出会ってしまったと抗えない魅力に狼狽し続ける1年。
棺に一緒に入れて欲しい香りとなりました。
会員 No.00016012023 G 017 Tomoco MIZUNO
【香水名】パピルス モレキュレール オードパルファム / PAPYRUS MOLECULAIRE EAU DE PARFUM
【ブランド名】メゾン クリヴェリ / MAISON CRIVELLI
【発売年】2020年
【パフューマー】レスリー・ジラール / Leslie Girard
【香りのノート】ウッディ
コリアンダー、パピルス、サンダルウッド、
ブラックペッパー、トンカビーン、タバコ、レザーアコード
【オフィシャルサイト】
L’ATELIER DES PARFUMS
https://latelierdesparfums.jp/products/papyrus-moleculaire-edp-spray