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review 0056 : リブレ / LIBRE

【香水名】 リブレ / LIBRE
【ブランド名】イヴ サンローラン / YVES SAINT LAURENT
【発売年】2019年
【パフューマー】アン・フリッポ、カルロス・ベナイム(IFF)
【香りのノート】フローラルラベンダーノート
【キーとなる香り】
T:ラベンダー、タンジェリン、ネロリ
M:オレンジブロッサム、ジャスミンサンバック
L:バニラ、トンカビーン、ホワイトムスク
【レビュー対象商品】オーデパルファム 30ml 9,000円 100mL ¥13,000(本体価格)
※レビュアーが実際に試香した製品のみ記載しています。価格はレビュー当時のものです。
【オフィシャルサイト】
https://www.yslb.jp/product/libre/

 今回の香水レビューは、フランス フレグランス財団(The Fragrance Fondation France)が発表した2020年の ザ フレグランス ファンデーション アワードの中から、レディスフレグランス最高賞にセレクトされた『リブレ / サンローラン 』を取り上げます。1973年にニューヨークでスタートしたこのアワードは、当初アメリカのジャーナリストたちから愛を込めてFIFI賞と呼ばれていましたが、後の2013年にザ フレグランス ファンデーション アワードと改称されます。アメリカを始め、イギリス、フランス、イタリア等、各国で、それぞれの基準で審査されます。
 フランスは今年が28回目のアワードの発表となります。フランスのフレグランス財団が重視している三つの本質的な役割とは

1)香水のノウハウ(情報技術)、才能、価値を引き上げること
2)香水に関わるプロフェッショナルを結集させる
3)香水への心からの情熱と香水業界への愛を広く大衆とを分かち合う

です。香水を国を代表する文化の一つとして認識しているフランスらしい視点です。

 コロナ禍の影響で、今年はセレモニーもオンラインで開催されました。『リブレ / サンローラン 』は、ブランドのマーケティングディレクターとパフューマーがインタビューを受けていました。
 イヴ サンローラン ボーテ インターナショナル パルファンマーケティング ディレクターのジュリエット・フェレ氏は「『リブレ』を纏う女性像は、自由を探さない女性です。なぜなら彼女はすでに高度に自由な女性であるからです。率直に、妥協なく自分自身と一致している、とても現代的な自由です。 解放されたセンシュアリテと、うちなる力を持っています」。そして「サンローランにはメゾンとしての香りの遺産があります。ブランドが持つ本質的に持つクリエイティビティが『リブレ』にも表現されています」。と熱く語っています。

 パフューマーのアン・フリッポ氏は逆に、自由な女性像という先入観を強く持ち過ぎずに「二元性に注目した」とクールに語っています。「フェミニンとマスキュリン。フゼアとフローラル。相対する二つをラベンダーとオレンジフラワーで壮麗に表現した」とのこと。そして「カルロス・ベナイム氏、カリーヌ・デュブルイユ氏とのコラボレーションも素晴らしかったとのこと。
 フゼアノートの主要な香り成分の一つであるが為に男性の香り、というイメージの強いラベンダー。爽やかなオーデコロンにも女性的なニュアンスを加えるオレンジフラワー。この二つの香りの歩み寄りは、近年の性差を前提とした社会的、文化的性差をなくそうとするジェンダーレスな思想が香水の世界にも波及し、既に目新しいことではなくなった証です。今年はアメリカ、イギリスの ザ フレグランス ファンデーション アワードにおいても『リブレ / サンローラン 』がレディスフレグランス最高賞を獲得したところを見ると、人々の感覚の中にこの香りはメンズ、この香りはレディスという感覚的な区分けもなくなってきたのでしょう。いえ、女性が男性的な強さを身に付けたのかもしれません。

 さて、私は昨年パリで購入した『リブレ』を、10月のある1日、纏って過ごしてみました。早めの昼食後にウェストに2プッシュ、耳の後ろに2プッシュ、足首に2プッシュして出かけて、午後から広い会議室での3時間のミーティングの後に、交流会。初めてお会いする方々に強すぎると感じさせることなく、でも「良い香りですね」と、香水をつけていることは感じてもらえました。夜は20時からバレエのレッスンへ。踊っているうちにまた香りが再生されるかの様に力強く立ち上ってきます。香水をつけてからすでに9時間ほど経過していて、このロングラスティングな香り方がヨーロッパ、アメリカの人たちの嗜好性に合っているのです。わかりやすく言うととにかく香りが長持ちし、タッチアップなどしなくてもいつまでも香るのでお得だわ、という感覚すら覚えます。香水に「ほのかに消えゆく」と言う感覚を求める日本とは異なり、儚いと言うイメージが全く無いのが見事です。
 トップノート、ミドルノート、ラストノートの時間毎の変化はあまりはっきりとしておらず、全てが最初から一つのハーモニーの様です。

 ふわりとした自分のあり方を卒業して、自分のキャラクターを強く打ち出したい、と願い始めた女性にぜひお勧めしたいのが『リブレ』です。そして、しっかり香る香水にノスタルジーを感じ、それを使いこなせる力のある大人の女性にもぜひ纏って頂きたい香りです。

 フランスのザ フレグランス ファンデーション アワードで香水を評価する時に重要視されるのはインテグラリテ=全体。つまり、香水の液体(=香り)、ボトル、PRマーケティングにおいて一貫性があるかどうか。その視点からも最高と認められた『リブレ』。なかなか出かけられなくなってしまったヨーロッパの雰囲気を感じる為に、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょう。

 レビュアー 地引 由美 Yumi JIBIKI 2020年10月

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