review 0054 : ジ アイズ オブ ザ タイガー / The Eyes of the Tiger
【香水名】ジ・アイズ・オブ・ザ・タイガー / The Eyes of the Tiger
【ブランド名】グッチ/ GUCCI
【発売年】2019年
【パフューマー】アルベルト・モリヤス / Alberto Morillas
【香りのノート】オリエンタル
【キーとなる香り】アンバー、シスタス樹脂、ダークバニラ
【レビュー対象商品】オードパルファム 100mL ¥36,000(本体価格)
※レビュアーが実際に試香した製品のみ記載しています。価格はレビュー当時のものです。
【オフィシャルサイト】
https://www.gucci.com/jp/ja/st/capsule/the-alchemist-garden
2019年春にGUCCIから発売されたフレグランス「ザ アルケミストガーデン」シリーズの1つです。鬼才と評されるアレッサンドロ・ミケーレがクリエイティブディレクターに就任してから、『GUCCI BLOOM』に続く2作目のフレグランス(こちらは限定店のみ販売の高級ライン)となります。
現在、9種のオードパルファム、3種のパフュームオイル、3種のパフュームウォーター、キャンドル1種のラインナップで、シリーズのネーミング「錬金術師の庭」とあるように、香りを自分で “錬金術の如く” 組み合わせて楽しめるようデザインされています。
まず目に留まるのは「ザ アルケミストガーデン」の際立った世界観を表現するボトルです。ミケーレが牽引するGUCCIは、これまでのブランドが持つエレガントかつセクシーなスタイルとは一線を画し、様々な要素やモチーフが混在したデコラティブで圧倒的なインパクトがあるのが特徴です。「ザ アルケミストガーデン」シリーズも、蛇や虎などの様々な動植物が登場し、木製の棚に並べられた、好奇心をくすぐる中世の薬局瓶を思わせます。少し重いボトルですが、ヴィンテージ感のあるとても美しいボトルです。また、梱包されたボックス、店頭で香りを試す円形のムエット(試香紙)にも、白地に金のエンボス加工で動植物が描かれており、とても高級感があり手が込んでいます。店頭で色々な香りを試し、様々な種類のムエットを持ち帰るのも、香り選びの楽しみの1つとなるでしょう。
調香を担当したマスターパフューマ―である、巨匠アルベルト・モリヤスは、このシリーズで基本の香料に立ち返る姿勢をとっています。それぞれのフレグランスが1つの香料にフォーカスしていて、他の香りと重ねづけもできるよう基本的にすべてシングルノートになっています。なので、香りの変化は大きくありませんが、最高品質の香料がもつ美しさを堪能できるシリーズです。ここに、ミケーレの奇抜とも言える芸術的感性と、肌ではなく、まるでオーラが香るような柔らかい世界観を得意とするアルベルト・モリヤスの才能のかけ合わせが、最も純粋で最も感情的な香りを生み出したともいえるでしょう。
『ジ・アイズ・オブ・ザ・タイガー』はウッディなシスタス樹脂とダークバニラをブレンドしたアンバー系のフレグランスです。香りのテーマは、“虎死して、則ち精魂地に入りて石と為る、それすなわち琥珀なり”と語られた、虎の魂が地上に降りて琥珀(英語でアンバー)になったとする中国の伝説からインスピレーションを得ています。
香料のアンバーは重みのある印象ですが、『ジ・アイズ・オブ・ザ・タイガー』は、軽く透明感のある非常に上質なアンバーです。柔らかな暖かみと、軽い衣に包み込まれたような心地よさがあります。スモーキーなシスタス樹脂と、少しカラメリゼされたようなダークバニラによって、香りの幅が広がり暖かみを広げ一層の深みを加えています。
香りの持続時間は私の肌で7時間以上ありました。
肌寒くなる秋から冬にかけて、エレガントに楽しめる香りですが、湿度があまり高くない、晩夏の夜にもおすすめです。ユニセックスですが、男性が纏うとよりソフトに、女性が纏うと少し危険で繊細な印象を与えます。内面に秘めた情熱や美なるもの、成功など目指していく獣的な力を誰でも持っていますが、自分の本質を発見して目覚めた虎の目をした女性のようです。
この香りを感じて振り返ると、自身の中にある目にはみえないパワーを放ちながら、物静かに優雅に歩く虎の姿が一瞬見えたような印象を与える魅惑的な大人の香りです。
レビュアー 羽賀 香織 Kaori HAGA 2020年9月