review 0045 : オカバンゴの水面 / REFLET SUR L’OKAVANGO
【香水名】オカバンゴの水面 / REFLET SUR L’OKAVANGO
【ブランド名】エラ ケイ / ELLA K
【発売年】2020年2月19日(水)伊勢丹新宿本店限定発売
【パフューマー】ソニア・コンスタン / Sonia CONSTANT
【香りのノート】パウダリーウッディアコード
【キーとなる香り】
アカシア、パピルス、シコモア(セイヨウカエデ)
【レビュー対象商品】 オードパルファン 70ml 26,000円(本体価格)
※レビュアーが実際に試香した製品のみ記載しています。価格はレビュー当時のものです。
【オフィシャルサイト】https://www.forte-tyo.co.jp/ellak.html 株式会社フォルテ
香料会社ジボダンのシニアパフューマーとして数々のプレステージブランドからオーダーされる香水の調香を手掛けると同時に、パーソナルブランド『エラ ケイ』では、彼女自身が主役である旅をテーマにした香水を発表する、ソニア・コンスタン 。旅のパートナーである夫君もまた多くの有名ブランドに柑橘類の香料を提供するイタリアのカラブリア地方の香料会社に勤務していて、高品質の香りを見極める力を持っています。旅を愛する二人の好奇心は軽々と国境を超えていきます。これまでにエラ ケイの香水の舞台となった国は、アフリカ、イタリア、タイ、インド、ベトナム、アルタイ共和国、日本。この度発表された『オカバンゴの水面』の舞台はボツワナ共和国。アフリカ大陸の南部の内陸に位置しています。
ボツワナ、サバンナ、照りつける太陽、世界最大の内陸のデルタ(湿地)…そんなキーワードを聞くとアーシーやアクアティックな香りを想像してしまいがちです。「この香りからは僕にはアフリカ大陸を想像できない」と言った若い男性もいます。確かに『オカバンゴの水面』というタイトルは具象的ですが、これは彼女がそこで感じた、甘い夢のような感覚を共有するための香りです。苛烈な自然環境の中で疲労を覚えながらも、ソニア・コンスタンはパリでは考えられない様々な感覚を捉えました。それは早朝の柔らかな太陽の光の煌めき、黄金に輝くサバンナの草が歩くたびに足を撫でる心地よさ、アカシアの甘ったるい香りを感じながらオカバンゴデルタの水面に映った自分の姿は、ミモザの冠を被っているように思えたそうです。
彼女の感覚を共有する香りの構成は、まず、アカシア、ミモザ、蜂蜜の甘い香りに寄り添うデルタに生える低木、ウーリーケーパーのパウダリーノート。緑の湿地に生えるパピルスのグリーンノートはトンカビーンとブレンドされ、ナチュラルなクマリンのような香りに変化してパウダリー感を強調します。やがてシカモア(セイヨウカエデ)とモパネのウッディノートと、リキュールになったマルーラの実のフルーティノートが続きます。
ボトルデザインはこれまでと同じく、アールデコの流れを汲む幾何学的かつエレガントなスタイルで、ゴールドのキャップが重厚感を添えます。ボックスの内側にはソニアとオリヴィエが京都で心を奪われた日本人イラストレーター、中田仙次郎の手による風景を覗く小窓のようなイラストが。ブランドのロゴのトンボは、勇気と勝利の象徴であると共に、日本への敬意のしるしです。
1924年に女性初のヨットレースのオリンピック選手となった後、やがて冒険写真家となるエラ・マイヤールのエラ、という名と、ソニア・コンスタンの母方の祖父のKuceaのKを組み合わせた ELLA K というブランドネームは、未知の世界へと冒険と挑戦を続け、新しい香りを生み出し続ける彼女の精神そのもの。自信と不安との間で揺れながら日常に埋れがちな現代の女性は、彼女のエスプリ(=香り)を纏うことで自らを輝かせ、新しい力を引き出せるでしょう。
レビュアー 地引 由美 Yumi JIBIKI 2019年12月