review 0044 : シャリマー スフル ドランジェ / ゲラン
【香水名】シャリマー スフル ドランジェ / SHALIMAR SOUFFLE D’ORANGER
【ブランド名】ゲラン / GUERLAIN
【発売年】2019年12月1日(日)全国限定発売
【パフューマー】ティエリー・ワッサー / Thierry WASSER
【香りのノート】フロリエンタル
【香りの構成】
トップノート:マンダリン、ベルガモット、パチュリ
ミドルノート:ネロリ、ジャスミン サンバック
ラストノート:オレンジブロッサム、サンダルウッド、バニラ
【レビュー対象商品】 オーデ パルファン 50ml 12,600円(本体価格)
※レビュアーが実際に試香した製品のみ記載しています。価格はレビュー当時のものです。
【オフィシャルサイト】https://www.guerlain.com/jp
ゲラン社が1928年のメゾンの創設100周年の準備に向けて活気を帯びている最中、ジャック・ゲランはその後100年近く愛されることになる素晴らしい香水の創作に着手しました。1921年にすでに完成していたその香りの処方は、1925年のパリ万博(=現代産業装飾芸術国際博覧会)にて世界初のオリエンタルノートのフレグランスとして発表されます。香りのテーマの舞台であるシャリマー庭園の泉にヒントを得てレイモン・ゲランがデザインした『シャリマー』の香水瓶は万博で最高賞を受賞し、その評判により瞬く間に世界中の女性を虜にします。1828年以来の長い時間、ゲランという香りの王道をバトンを渡し続ける5人のパフューマーが走り続けて来ました。2019年のフェスティブシーズンを前に『シャリマー』の遺伝子を引き継ぐ新しい香水が発売されました。『シャリマー スフル ドランジェ』です。「オレンジのそよ風」というタイトルで、ボトルには豊かに実るオレンジの果実と、美しく咲き誇るオレンジブロッサムがアクティブな手法で描かれ、朱を帯びた赤とネイビー、水色の大胆な配色は、20世紀初頭にヨーロッパで人気となった、インドの大地が生み出す豊潤な色石を組み合わせた色のコントラストを感じさせます。
ゲラン5代目のパフューマーであるティエリー・ワッサー。今回も彼の調香は香料の生産地の自然のエネルギーを感じさせながら、幽玄なラブストーリーの世界へと誘います。スプレーした瞬間は苦味さえ感じるフレッシュさがあり、エネルギーを感じさせる鮮やかなシトラスノートが広がります。1トンの果実から500グラムのオイルしか採集できない貴重なベルガモットの香りをパチュリが下支えしているせいか、ひととき、ジェンダーレスな印象さえ受けます。この香りのニュアンスはとても現代的。やがて静かに霧が忍び寄るようにジャスミン サンバックの香りが漂ってほっとするのも束の間、ゴージャスなカラブリア産のネロリがインドの伝統を感じさせるサンダルウッドと、オリジナルの『シャリマー』にも豊潤で官能的な印象を与えているバニラと溶け合い、まろやかなオリエンタルノートに辿り着きます。熱を感じるほどの強いオリエンタルではなく、夏の日射しに温められた海水のような心地よい温度感。いつまでも浸っていたいと思わせるようなまろやかなオリエンタル。
このレビューを書いていてふと気がつけば窓の外は暗くなり始めています。地平線近くはマンダリンカラーの夕陽の色に染められ、上空からは蒼い闇が降りてきます。『シャリマー スフル ドランジェ』のボトルはネイビーのキャップの下、ボトル部分は茜色の液体に満ちていて冬の夕暮れのカラーコンビネーションと同じ。冬の夕方5時、香りと向き合う時にこんな発見があると思いませんでした。この時間に『シャリマー スフル ドランジェ』の香りを纏うと素敵な夜へと気持ちが上がります。
『シャリマー スフル ドランジェ』の香りには自然の生き生きとした香りと、オリエンタルノートの華やかな香りがカクテルの様に溶け合っていています。ロマンティックなことが起きそうな華やかな季節に、素肌感を活かしたメーキャップに鮮やかなクリスマス限定色のルージュを唇に塗って出かける。そんなシーンに纏いたい、オリエンタルノート初心者の方にもぜひオススメしたい『シャリマー スフル ドランジェ』です。
レビュアー 地引 由美 Yumi JIBIKI 2019年12月