review 0043 : ミキモト オード パルファム / ミキモト
【香水名】ミキモト オード パルファム / MIKIMOTO EAU DE PARFUM
【ブランド名】ミキモト / MIKIMOTO
【発売年】2020年1月25日(土)国内直営店にて発売 ※海外店舗でも順次発売予定
【パフューマー】フランク ・ヴォークル / Frank Voelkl
【フレグランスデザイナー】レイモンド・マッツ / Raymond Matts
【ボトルデザイナー】ランス・マックレガー / Lance McGregor
【香りのノート】フレッシュフローラルウッディ
【香りの構成】
トップノート:グレープフルーツ、オレンジ ビガラード、シチリアン レモン、ベルガモット
ミドルノート:アイリス、マグノリア
ラストノート:龍涎香、サフラン、沈香、白檀、
【レビュー対象商品】 オード パルファン 75ml 30,000円(本体価格)
※レビュアーが実際に試香した製品のみ記載しています。価格はレビュー当時のものです。
【オフィシャルサイト】https://www.mikimoto.com/jp/
【キャンペーンムービー】”float on reality” https://www.youtube.com/watch?v=MvGbhC6MT6o&feature=emb_logo
パリのヴァンドーム広場、ニューヨークの五番街。海外でラグジュアリーブランドがメゾンを並べるエリアを歩いている時、そこに MIKIMOTO のロゴを見つけると、とても嬉しく思います。外の光を反射して煌めくダイヤモンドなどとは異なり、内側から光が湧き出てくるような真珠の輝きには、日本的な気品と清らかさを感じます。歴史に残る多くの肖像画を見ても、描かれた人物の純潔や貞節、純粋さやもの柔らかな様子を表現するアクセサリーとして真珠が描かれていることが見て取れます。
子供の頃、何かの本で読んだ御木本 幸吉 物語。MIKIMOTOの創業者である彼が素晴らしい真珠を生み出すために(それは、元々は真珠を目当てに乱獲される自然のアコヤ貝の乱獲を防ぐためだったのですが)、挑戦を続ける様子を子供向けにわかりやすく書かれたお話でした。中でも印象に残っているのは、苦労を重ねて最初に出来た真珠を見た御木本幸吉の喜ぶ様子、そして、その真珠が半円真珠だったこと。真珠は丸いもの、と思っていた子供心に「丸い真珠は簡単に出来るものではない」という、当たり前のことの背後の挑戦と努力について考えさせられたことを覚えています。
さて、1893年、御木本 幸吉 が初めて真珠の養殖に成功してから127年目となる来年、2020年1月25日にブランド初のフレグランス『MIKIMOTO EAU DE PARFUM』が発売となります。MIKIMOTOのフレグランスだからパール加工されたボトルに、女性向けのエレガントなイメージの香りかしら?との予想は、銀座のMIKIMOTO本店で行われた発表会で見事に裏切られました。輝くメタルと透明なガラス。曲線と曲面と直線と平面。球を内包した四角形。レトロなロマンティシズムとは正反対のモダンな造形のボトルをデザインしたのはランス・マックレガー。2005年に世界的メイクアップブランドのエグゼクティブディレクターに就任した後、2009年には自身のスタジオ、McGregor&McGregorを設立し、数々の有名ブランドのフレグランスボトルをデザインしてきた方です。
底面のガラスは厚く、高級感があり、どの向きに置いても存在感があります。そして、メタルの球面に映る部屋の風景は置く場所によって変わり、見たことのない小宇宙のように現れます。そして、ある晴れの日に私は見つけてしまいました。光の射す窓にボトルの球面を向けると、真珠を包んでいる何層もの真珠層のように、輝く幾重もの円の重なりが現れるのです。真珠を生み出す自然のエネルギーが、この一瞬の角度に現れる多重円に象徴されています。
ボトルの中で揺蕩う夕日のような色の香水は、パフューマー、フランク ・ヴォークルの調香。MIKIMOTOのメッセージを香りで表現するために、フレグランスデザイナーのレイモンド・マッツとディスカッションを重ねた結果、真珠のもつピュアなイメージに現代的な優美さと華やかさをプラスするメインの香りはアイリスとマグノリアに。スプレーした瞬間、たっぷりとオゾンを含んだ爽やかな海辺の空気感が、シトラスの香りの波と共に吹き過ぎていきます。やがて深みのあるアイリスと軽やかなマグノリアの香りが現れてきます。この時点で出現するのはフェミニンな傾向に流されない、ジェンダーレスなフローラルノート。キャンペーンムービー “float on reality” で表現されているような清冽さがあります。波打ち際で拾った貝殻の匂いを嗅いだときのようなソルティな香りが一瞬漂った後、肌に残るウッディな香りはシトラスとフローラルの香りの層をまとっていて、静けさと共に希少なサフランの香りの持つ熱感があります。
母なる海のパワー、真珠貝の神秘、自然と人知を香りにしたのが MIKIMOTO EAU DE PARFUM。それ故に新しい強さを感じさせるこの香りは、諦めずに、挑戦し続ける時に必ず纏いたい香りです。
レビュアー 地引 由美 Yumi JIBIKI 2019年12月