review 0035 : メ フルール ドゥ ローズ / ジャン=ミッシェル・デュリエ
【香水名】メ フルール ドゥ ローズ / Mes fleurs de roses
【ブランド名】ジャン=ミッシェル・デュリエ / Jean-Michel Duriez
【発売年】2017年
【パフューマー】ジャン=ミッシェル・デュリエ / Jean-Michel Duriez
【香りのノート】フローラル
【香りのポイント】ダマスクローズ、ピヴォワンヌ、オレンジサングイン、カシス、アンブレットシード、サフラン、パチュリ
【レビュー対象製品・価格】オードゥ パルファム 70ml €145,00
【公式サイト】https://www.jeanmichelduriez.com/fr/
※レビュアーが実際に試香した製品のみ記載しています。価格はレビュー当時のものです。
ジャン=ミッシェル・デュリエは、子供の頃から家にある香水のミニボトルが大好きで、庭に咲くローズとミントの葉を合わせて香りで遊ぶ子供でした。1983年、調香師になるために現在のISIPCAの前身であるISIP(Institut Supérieur International du Parfum)に入学し、卒業後はグラースの香料会社 E.D.O. (Études et Diffusions Olfactives)のパフューマーとなりパリでそのキャリアをスタートし、1989年からは花王(Kao France SARL)で活躍します。その後、1997年から2011年まで『ジャン パトゥ』で活躍したジャン=ミッシェル・デュリエ。前任のジャン・ケルレオがオスモテック創立の為にブランドを離れた後、チーフパフューマーとしてブランドの指揮を任されます。
1998年には『アンアムール ドゥ パトゥ / An Amour de Patou』を発表し、風に乗って流れて来るようなキンモクセイの香りと、涼やかなホワイトフローラルノートで優しさを表現したその香りは、柔らかな手書き風の文字で香水名が書かれたフロストピンクのボトルの雰囲気とよく似合い、日本でもとても好評でした。その後、資本によるM&Aの影響で、『ロシャス / ROCHAS』に移籍。2015年まで活躍した後、香水コンサルタントとして独立します。
香料会社やブランドの求めに応じて香水を作ってきた彼は、パフューマーとしてのキャリア30周年を迎えた2016年に自身の名を冠した香水ブランド『ジャン=ミッシェル・デュリエ』を創立し、2017年3月には7つの香水からなる『セーヌ川のあるパリ情景 / Paris-sur-Seine』コレクションを。さらにつづく5月には、3種類からなる『5月のパリ / Paris en mai 』コレクションを発表し、2018年1月にさらにもう一作を発表。香りのクリエーションもブランドの運営も順調な彼と東京で久しぶりに再会し、彼の親友のピエール・エルメの南青山店でデセールを頂きながら、香る時間を過ごしました。
解説をお聞きしながら試香させて頂いた香水は、どれもとても綺麗な香り。バランスが取れていて、コレクション毎のコンセプトがまるで絵画のように眼前に浮かんで来ます。”5月のパリ”コレクションの中で、フランスで一番人気の香りは 『メ フルール ドゥ ローズ / Mes fleurs de roses 』です。トップノートでグリーン香を感じさせる爽やかなカシスは、ダマスクローズとピヴォワンヌ(シャクヤク)と溶け合うように、リキュールのクレーム ドゥ カシスのとろりとした香りへと変化します。コレクション名の「5月のパリ」は過ごしやすいとても良い時期。瀟洒なマンションのエントランスにはよく手入れされたローズが美しく咲き誇っているのを目にします。『メ フルール ドゥ ローズ / Mes fleurs de roses 』をスプレーすると、パリの青い空の下、心地よい風に揺れるローズの花が肌の上に咲いたような自然な香りに心が晴れやかになります。それでいてコクのある、密度を感じさせる香りのボリューム感は、しっかりとした香水を纏った時の満足感があります。ラストノートは重くないムスク調のアンブレットシードでまとめながら、サフランの豪華さと涼やかでありながら官能的なパチュリの香りでセクシーさを表現しています。香水のボトルデザインは、パルテノン神殿の石の円柱からインスピレーションを得てジャン=ミッシェル自らが描いたデザイン画を元に、ピエール・ディナンの手により完成しました。立てて置くのはもちろん、横に寝かせてもステキなデザインです。
Yohji Yamamoto、LACOSTE、Dolce & Gabbana、ESCADAなどのブランドの求めに応じて香りを創作し、「パティスリー界のピカソ」と異名をとり日本でも大人気のパティシエ、ピエール・エルメ / PIERRE HERMÉ と共著でお菓子と香りの美麗本『Au Cœur du Goût』を出版し、大統領官邸のエリゼ宮の近く、5つ星のさらに上のランクのパラス(宮殿)ホテルである「ル ブリストル パリ /Hôtel Le Bristol Paris」の香りのキャンドルを手がけるなど、様々な一流ブランドの求めに応じて来たジャン=ミッシェル・デュリエの手から差し出された香水たち。高品質で心地よく、安心して身を任せられる香りばかりです。
レビュアー 地引 由美 Yumi JIBIKI 2018年10月