review 0049 : パルファム フジ / PARFUM FUJI
【香水名】パルファム フジ / PARFUM FUJI
【ブランド名】株式会社ミロク / Miroku Corporation
【発売年】2014年
【パフューマー】アラン・ベルジュ / Alain VERJUS
【香りのノート】シトラス・グリーン
【キーとなる香り】
オゾンノート、針葉樹の香り、コメツカの葉の香り、ブナの葉の香り、スイカズラの香り、富士山湧水の香り、セダー、ムスク、 アンバー
【レビュー対象商品】香水 8ml 2,500円(本体価格)
※レビュアーが実際に試香した製品のみ記載しています。価格はレビュー当時のものです。
【オフィシャルサイト】
http://www.parfumfuji.jp/
“日本”のイメージは? との質問に、アニメ、ラーメン、自販機、ウォシュレット等と海外の方がイメージするものが以前と様変わりしていて、時代の流れを感じている。一方、日本人が自国の象徴として思い浮かべるものは、その時の流行を反映しつつも世代を超えて未だ共通しているのではないかと思う。京都、奈良、着物、相撲、桜、抹茶、将棋等。そして必ず一人はいるであ ろう、“富士山”。今回ご紹介するのは、この富士山の香り。
新幹線の窓から富士山を眺めながらふと思った。“山の香り”であれば、植物や木々を育む土、陽光に輝く緑の葉の青っぽさを感じる自然の香りを想像できる。でも、“富士山の香り”となるとどうか?TV等で見るむき出しの土に岩が転がる情景では全くイメージができない。こう思っていたところで出会ったのがこの「PARFUM FUJI(パルファム フジ)」。記憶が薄れているが、購入したのは東名高速道路の上りの富士川SAだったと思う。
外箱もボトルも至ってシンプル。白地に、グラデーションを施した藍色で富士山の特徴的な形が描かれているだけだ。マスカラやリップグロスより細みで短いサイズのスプレーボトルは携帯しやすく、外箱も小さく軽量。日常使いを想定した手軽なお土産として購入を誘うポイントだろう。
最初の一吹きで感じるのは、少し霧がかった早朝の森林のように、オゾンたっぷりの瑞々しいクリーンな空気と森の濃緑の新鮮で力強いグリーンな香り。男性的な印象で、何事にも動じない落ち着きが富士山の悠然とした風格と重なる。2~3分程経つと、グレープフルーツの皮の苦みを伴った爽やかさがアクセントとして加わり、香りが軽やかになる。時間とともにグリーンの香りが落ち着いてくると、花の蜜のような甘さも感じられるようになり、純白や淡い黄色の花のような清楚な印象も垣間見える。変化した後の中性的な香りは、富士山の優美な姿を想起させる。
香りの持続時間は、約7時間程度。朝出かける前につけて、夕方まで肌に柔らかく残っている。 つけたては、力強いグリーンの香りに圧倒されるかもしれないが、数分もすれば落ち着くので周囲へ拡散しすぎる心配はないだろう。外出先でのつけたしも、携帯サイズの本領発揮で気楽にできるので、その日の気分で楽しんで欲しい。 しかし、ご当地香水のクオリティーに疑いをお持ちでは?調香師はアラン・ベルジュ。カルティエや資生堂等、ラグジュアリーブランドや大手化粧品メーカーの香り製作を手掛けている。「PARFUM FUJI」は、富士山の頂上から麓までの自然の変化に合わせて香りの印象が変わるよう設計されていて、見事に表現されている。どんなに有能な調香師でも、決められた予算で優れた香りを作るのには限界があるが、「PARFUM FUJI」は香りマーケティング協会(東京都)が2015 年に初開催した「香り―1グランプリ」でグランプリを受賞した実力派だ。
実は試香前、非常にシンプルなパッケージから、多くの人を魅了する富士山の美しい風貌を香りにしたのだと思っていた。試香後、調べているうちに、富士山には自然豊かな人気のハイキング コースもあるのだと知り、香りを通して新知識を得た。世間知らずといえばそれまでなのだが、 こういう体験もまた一興。
旅と香り。旅行、心の旅、人生の旅。旅にも色々あるけれど、香りはいつでも彩りを添え、記憶を一緒に留めてくれる。香りに出会うきっかけは様々。そして香りを通して見える世界もある。 気の向くままに“旅香”してみませんか?
レビュアー 新咲 清香 Kiyoka NIISAKI 2020年4月