review 0013 : Hyouge(ひょうげ) / パルファン サトリ
【香水名】ひょうげ / Hyouge
【ブランド名】パルファン サトリ / PARFUM SATORI
【発売年】2008年
【パフューマー】大沢 さとり / Satori OSAWA
【香りのノート】グリーンシトラス
【香りのポイント】グリーンリーフ、セージ、ジャスミン、バイオレット、パチュリ、ウッディ、アイリス
【レビュー対象製品・価格】オードパルファン 50ml 12,000円(本体価格)
※レビュアーが実際に試香した製品のみ記載しています。価格はレビュー当時のものです。
『Hyouge』は日本の香水ブランド、パルファン サトリの香りです。女性パフューマー、大沢 さとり さんの生み出す香水には茶道、花道、香道を修められた教養と、日本文化を慈しむ視線が、その香りから感じられます。『Hyouge』は16世紀の茶人である古田織部の、新しいもの、ことを積極的に取り入れた進取の気性と同じく、緑茶の香りから新しいものを私たちに提示してくれています。※2019年11月より旧名称『織部』から『Hyouge(ひょうげ)』に名称変更されています。
香水の世界では90年代「グリーンティ」の香りがトレンドになったことがあります。中でも、某装飾ブランドの香水は海外でも、そして日本でもたいへんな人気となりました。当初の日本の輸入代理店が化粧品会社であったために、その香りをモチーフにしたスキンケア製品やファンデーションまでが発売されていました。しかし、どうしても「?」という違和感が拭えなかったのです。
なぜならその「グリーンティ」は、ベルガモットを強調してアールグレイを連想させる香りであるか、シトラスにマテ茶や白茶の香りをプラスした香りで、どちらも日本人にとっては何か違う、と思わせるものでした。私たちが日々、茶筒から急須に入れる時に感じる茶葉の香り、茶碗から口に運ぶ時、思わず深く吸い込みたくなる緑茶の香りとは違っていたからです。
『Hyouge』には茶畑で生まれたお茶の葉の新芽、摘み取られたときの葉のグリーン香、煎茶を入れたときの立ち上る香気。抹茶を舌の上で味わうときのまろやかな甘みまでが、スプレーして肌にのせられた香りの粒子の中に表現されています。グリーンシトラス、グリーンリーフ、セージ、ジャスミン、バイオレット、パチュリ、ウッディ、アイリス。これらの香料からグリーンティを生み出すことに、パフューマーの技術の素晴らしさを感じます。そしてただ緑茶の香りを再現しただけのフレグランスとは違い、お茶のある風景と、そこにある人の優しさと品格と力強さを表現しています。
日本にいるときは、思い切り日本の良さを経験することが大切という会話をしていた時、若い方の中で子供の頃からお家で緑茶を淹れる習慣が無いという方がいらっしゃいました。もったいないことです。海外のティーサロンで「Ryoku cha(緑茶)」を初めて飲んだそう。でもヨーロッパのお水で入れた緑茶の味は、日本で飲むそれとは違います。
『Hyouge』の香りの中に現れる様々な香りの表情は、私たち日本人がいかに緑茶を愛しているかという証のようです。毎日、そして、男性でも女性でも纏える香りです。
レビュアー 地引 由美 Yumi JIBIKI 2017年10月