review 0003 : マジャイナ シン / ザ ディファレント カンパニー
【香水名】マジャイナ シン / Majaina Sin
【ブランド名】ザ ディファレント カンパニー / The Different Company
【発売年】2017年
【パヒューマー】エミリー・コッパーマン / Emilie COPPERMANN
【香りのノート】フロリエンタル
【香りのポイント】ジンジャー、オーキッド、バニラ
【レビュー対象製品・価格】オードパルファム 100ml ¥21,000(本体価格)
※レビュワーが実際に試香した製品のみ記載しています。価格はレビュー当時のものです。
マジャイナ シン。この不思議な名前の香水。マダガスカル語で人生を意味する”aina”(アイナ)という単語に、香りで人を魅了してしまう罪作りな一面を英語の”sin”(シン)=「罪」を加えて表現し、最初にフランス語で「私の」という意味の所有形容詞”ma”(マ)で始めたことにより「香りで人を魅了してしまう、なんて罪作りな私の人生」と、嘆きとも自慢とも取れる掛詞のようなネーミング。口に出して「マジャイナ シン」と呟くとまるで呪文のようです。
ザ ディファレント カンパニーはフランスの香水ブランドです。著名なパフューマー、ジャン=クロード・エレナ氏の「調香師は香りを創るのではなく、製品を作るのが仕事になってしまった」という嘆きと共に、商業ベースではない素晴らしい香りを創作することを目的にして、17年前、2000年にスタートした香水ブランドです。2009年にジャン=クロード・エレナがエルメスのメゾンパフューマーとなってからはお嬢様のセリーヌ・エレナ氏がブランドに参加。そして、繊細な感覚で様々な香料を操るベルトラン・デュショフール氏や、決断力のあるスイス人と芸術センスに満ちたイタリア人の血をご両親から受け継いでいるクリスティーヌ・ナジェル氏などが調香を担当するパフューマーとして名を連ねています。
『マジャイナ シン』は、エミリー・コッパーマンの調香です。彼女はISIPCAを卒業後、ベルトラン・デュショフールから良き薫陶を受け、ザ ディファレント カンパニーの香りの中でもラグジュアリーでナチュラルな香りのライン、レスプリ コロン シリーズを担当してこれまでにも個性が発揮された香りを発表しています。中でも東京の自然をテーマにしたグリーンフローラルウッディノートの『TOKYO ブルーム』は、私が育った東京の住宅地の自然を描き出したようで大好きな香水です。
『マジャイナ シン』の香りのインスピレーションは、独特の生態系を持ち、バニラの産地としても有名なマダカスカル島への旅だそうです。日本で見られる乾燥したものではなく、しっとりと湿り気を帯びてふっくらと褐色に輝くバニラの放つ豊かな香り。私はマダガスカルの隣の小島、レユニオン島でバニラの畑と工場を訪れたのですが、その時の香りを思い出します。そして畑で収穫されてからすぐに搾られて、1時間後には香料となっているジンジャーの香りは、根を乾燥させて得られるショウガの香料とは全く異なる生き生きとしたアクセントを感じます。オレンジの砂糖漬け、マロンクリーム、メープルシロップ、トンカビーンの香りは誘惑するようなグルマンノートとなり、オーキッド(蘭)、ヘリオトロープ、アンバー、ムスクはバニラエッセンスの海を揺蕩っているようにふわりふわりと立ち上ってきます。
『マジャイナ シン』の香りを纏って二、三日続けて出かけました。甘い贅沢な香りはくどくなく、香りの中で自分が解きほぐされるような感覚があり、もう少し自由にしても良いよというような香りからのメッセージを感じます。そして、『マジャイナ シン』香りに気づいた男性達からも、とても評判が良かったです。肌に載せてみると甘い香りだけでなく、植物としてのバニラの生き生きとした感覚があるからでしょうか。
ボトルデザイーはこれまでと同じく、ティエリー・バシュマコフ。ブルガリやカルティエの香水ボトルも手がけてきた彼のボトルは、香りの魅力をより引き立てます。
レビュアー 地引 由美 Yumi JIBIKI 2017年10月