review 0001 : アムール / ラリック
【香水名】アムール / L’AMOUR
【ブランド名】ラリック / LALIQUE
【発売年】2013年
【パフューマー】ナタリー・ロルソン/ Nathalie LORSO
【ノート分類】フローラルムスク
【香りの構成】ローズ、ガーデニア、ムスク
【レビュー対象製品・価格】オードパルファム 50ml ¥13,000(本体価格)
※レビュアーが実際に試香した製品のみ記載しています。価格はレビュー当時のものです。
ルネ・ラリックが香水瓶を初めて作成したのは1908年。目に見えない香りの世界を、独創的な感覚と美意識でボトルという形にしたラリックの登場により、それまで薬瓶のような香水ボトルは、アールデコという芸術の域にまで高められました。100年以上を経た現在でも、ラリックの香水瓶は多くの人を魅了し愛され続けています。
現在、クリスタル限定エディションとしてアールデコ様式の香水瓶が毎年発表されていますが、通常のラインでもラリックらしい歴史の鱗片を、様々なデザインの中に見ることができます。
「アムール」は2013年に発売されたレディース向けの香りです。現在の東京都庭園美術館(旧朝香宮)にあるラリック作成の玄関レリーフをモチーフとしています。レリーフに彫られた女性4人の背景にある光背のような翼が、「アムール」のボトル前面に描かれていて、まるで香りが光と共に放たれているような透明感のある美しいボトルです。
香りの軸となっているのは、ガーデニア、チュベローズ、ジャスミンですが、トップのベルガモットの爽やかさ、バラの華やかさ、ネロリの軽やかな甘さが、官能的なホワイトフローラルの香りを溶け合って、綿毛のような、または人肌の上を舞う衣のような、柔らかさがあります。
どこかクラシカルな上品さもあり、明るく優しいオーラに包まれたような女性らしさを表現できるので、どんなシーンにも似合います。
特別な香り、というよりも日常使いに、またオフィスなどでも好感度が高い香りです。
近年ニッチフレグランスの人気もあり、香水ボトルは皆同じ、というブランドが増えてきました。それはそれで店頭で見ても統一感があり、モダンで美しいものです。同時に、コストの問題もあり、「ボトルが香りを表現する」役割は失われつつあるのは少し寂しい気もします。
そんな中で、ラリックの香水瓶が持つ表現力は際立っています。目に映る美しさに人間は憧れるもので、手に取ってみたいな、という魅力を持っています。ラリックの香水の美しさは、彫り込まれたガラスの陰影や光、カットの手法が生み出す温度感が、香りを余すところなく表現しているところにあります。一つ一つの香りに、「やっぱりこの香水瓶でなければ」と思わせる香りとの一体感、それがラリックの魅力です。
2014年から、同一のボトルを使用する高級ラインが海外では発売になっていますが、ラリックの歴史を振り返るこのラインでも、アンティークデザインを取り入れた現代的な「ラリックらしい」ボトルとなっています。
香りの特徴は軽やかなホワイトフローラルです。日本でも人気が高いランバンのエクラドゥアルページュが好きな人は「アムール」もおすすめです。全体的には天然香料が持つ深みは少ないですが、合成香料のムスクが持つ雑味のない透明感が、上手く光の表現になっています。トップからラストまでの香りの変化はそれ程大きくありませんが、前述したトップのベルガモットと、ラストのサンダルウッドが重く広がりがちなホワイトフローラルを引き締めて、折り目のある清潔感も出しています。東京都庭園美術館のレリーフに描かれた女性が、淡い光の中にまっすぐに凛と立つ姿に重なります。
「アムール」はレリーフが放つ薄いピンク色の光を纏うような柔らかさがあり、幸せな気持ちにしてくれます。自分の中にある優しさを見直したい、女性らしさを引き出したい、そんな気持ちの時にぜひ手に取っていただきたい香りです。
レビュアー 羽賀 香織(はが かおり) Kaori HAGA 2017年10月