review 0039 : WATER REFLECTION EAU DE PARFUM / TOBALI
【香水名】 WATER REFLECTION EAU DE PARFUM / WATER REFLECTION EAU DE PARFUM
【ブランド名】TOBALI(トバリ) / TOBALI
【発売年】2019年
【パフューマー】非公開
【香りのノート】ジャポニズムフローラルシトラス
【香りの構成】
トップノート:ライム、タンジェリン、ベルガモット
ミドルノート:ガーデニア、ジャパニーズインク、グリーンティ、ヴァイオレット
ラストノート:エボニー、ムスク、ヒドゥンジャポニズム 834
※キーノート:ガーデニア(=クチナシ)、ジャパンニーズインク(=墨)、ライム
【レビュー対象商品】 オードパルファン 50ml 12,000円(本体価格)
※レビュアーが実際に試香した製品のみ記載しています。価格はレビュー当時のものです。
【オフィシャルサイト】https://tobali.jp/
日本文化を現代的にアップデートし、パリでデビューした香水ブランド『TOBALI』。約一年半ぶりとなる新作が『WATER REFLECTION EAU DE PARFUM』です。
ムエットにスプレーし、手に取ってからそっと鼻孔に近付ける『TOBALI』の新しい香りに向き合う時間はまるで儀式のよう。それは神聖な雰囲気さえ漂わせる白いボトルと白いパッケージを前にしているからでしょう。ボトルを手に取った時に感じる滑らかな質感と、様々に重なる白色が生み出す陰影もまた、世界中の香水ファンを魅了する理由でしょう。
トップノートのシトラスノートはライムのフレッシュさがありながらも、人目を惹きつけるような派手な柑橘の香りではありません。どこか清浄な落ち着きさえ感じるのは、奈良時代にすでに日本に伝えらていたという龍脳の香りが寄り添っているから。その香りはミドルノートになりガーデニア(クチナシ)の香りが現れると共に鮮やかに香りはじめます。そして時折、懐剣の切っ先のように鋭く、目に眩しいまばゆい煌めきのようにアクセントのあるスパイシーな香りとして現れ、香りを纏う人の感性を刺激します。全ての香料はラストノートでムスクに包み込まれていき、穏やかな水面のように静かに香ります。
私は香水がとても好きでありながらも、ある種の香水は作品としての完成度が素晴らしくても、気管支が刺激されて咳が出てしまうのでつけていることが出来ません。でも『WATER REFLECTION EAU DE PARFUM』はいつまでも嗅ぎ続けていられる香りで、自分の肌からいつも漂わせていたいと思います。何日か纏っている間にジムに行く日もありましたが、マシンとスタジオプログラムを終えてたくさん汗をかいた後でも、残り香は涼しい風を思わせるような清潔感のある香りでした。
ブランドのテーマである「秘める美」を実現する香りの核として「Hidden Japonism 834」が『TOBALI』の香水には配合されています。その開発は平安時代の人々が源氏物語を読んで憧れていた至高の香り、『承和の御いましめ』の処方を、株式会社日本香堂と共に現代に復活させることから始まりました。中東の国々の香り文化として煙を出しながら部屋に満たされる香木の匂いとは違い、炭で暖められた灰に包まれてやわらかく香る『空気』を愛でるのが日本の香道における香木の香りの愛で方です。その繊細な香りを液体にと凝縮(=Condensation)したのは、日本の美の概念を香りに昇華させることを実現した『TOBALI』の情熱と、パフューマーの手腕の融合。それはまるで現代の秘法。
シトラスやアクアティックのシングルノートに近い、いわゆる「フレッシュ」なだけの香りでは物足りない方。そして今、初夏から夏にかけての香水をお探しの方に、女性にも男性にも『WATER REFLECTION EAU DE PARFUM』をおすすめします。ガーデニアの香りは女性に似合うのはもちろん、ヨーロッパの社交界ではブートニエールとしてスーツのラペルを飾る花ですから、紳士的な雰囲気も醸し出します。
『TOBALI』の香水は、相対する二面性とそれを体現して来た実在の日本人がそれぞれのテーマになっています。『WATER REFLECTION EAU DE PARFUM』のテーマは「華麗に秘める孤独」。モチーフとなる
ブランド名の『TOBALI』は帳(とばり)とは、覆い隠し、秘める布。視線を遮る垂れ絹は、場を完全に遮断するのではなく、柔らかくコミュニケーションする余裕を有しています。『TOBALI』のSNSのフォロワーに世界的なインフルエンサーやアーティスト、セレブリティなどが多いのは、ブランドの世界観が細部の表現においてまで表現されているからでしょう。そして、パリ、ロンドン、ミラノ、ニューヨーク、世界中の超一流の百貨店や香水専門店で『TOBALI』が販売されていて、世界中の人が『TOBALI』の香りを喜んで纏うのは、その香りに今までになかった新鮮な驚きを発見し、同時に心の安らぎと新しいエネルギーを感じるからに違いありません。今年3月28日に、フランスの老舗百貨店ギャルリ・ラファイエットが、シャンゼリゼ大通りに新店をオープンしました。伝統あるオスマン店とは違う革新的なこの店舗に並ぶ香水として『TOBALI』が選ばれたこと、素晴らしいと思います。
レビュアー 地引 由美 Yumi JIBIKI 2019年4月