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review 0027 : ナイチンゲール / ズーロジスト

【香水名】ナイチンゲール / NIGHTINGALE
【ブランド名】ズーロジスト / ZOOLOGIST
【発売年】2016年 
【パフューマー】稲葉 智夫 / Tomoo INABA
【香りのノート】シプレフローラル
【香りのポイント】レモン、ベルガモット、サフラン、梅の花(ジャパニーズプラムブロッサム)、レッドローズ、ヴァイオレット、ウード、パチョリ、モス、サンダルウッド、フランキンセンス、ホワイトムスク、アンバーグリス
【レビュー対象製品・価格】オードパルファム  60ml 18,500円(本体価格)
レビュアーが実際に試香した製品のみ記載しています。価格はレビュー当時のものです。

 『ズーロジスト』は香港出身の香水コレクター、ヴィクター・ウォン氏によって、2013年に立ち上げられたカナダ、トロントのブランドです。あまり馴染みのないブランドではないかと思いますが、最近日本国内での取り扱いが開始されました。

 「冷静な観察眼に支えられて具現化された動物たちへの畏敬の念」

『ズーロジスト』=動物学者の名が示す通り、動物たちの特徴を香りで表現することがコンセプトのブランドです。動物を傷つけたくないとの倫理的理由から、天然の動物由来の香料の代わりに合成香料が使われており、『ズーロジスト』のすべての香水には何らかの(合成)動物香料が含まれています。この『ナイチンゲール』の調香は、6,000以上の香水レビューを手掛けてこられたフレグランスジャーナリストでもある稲葉 智夫(いなば ともお)氏。正に世界中の香水を熟知された方です。

 『ナイチンゲール』は、ヴィクターからのオファーがあった時点で既に出来上がっていた「花かんざし」という香水がベースになっているとのこと。確かにエチケットに描かれたうぐいすは、梅の「花かんざし」で装っています。出家する姉に宛てて妹が詠んだもの悲しい和歌にインスピレーションを得て創られた「花かんざし」の香り…これをハッピーエンドの物語にするために、梅の香りをメインに据えたそうです。香水のベースに存在する物語を知ると、香りへの興味と愛情が益々湧いてきます。

 もの悲しい物語、梅の香り、ナイチンゲール(うぐいす)…これらのキーワードを知ると、はかなくやさしげな香りをイメージしがちですが、これは幸せに裏切られます。
 『ナイチンゲール』に使われた香料を試香させて頂く機会があったのですが、梅は熟成された梅酒のような芳醇な香り、レッドローズアコードは酸味が強くまさしく赤いバラの香り、ベラモス(オークモスに含まれる成分)は雨上がりの土のような香り…どれもかなり力強い香りでした。これらの香料が絶妙にブレンドされて創りあげられた『ナイチンゲール』は、思いのほかパワフルです。かわいらしく甘いだけではない、艶っぽくしかも頃合いの凄みもある、力強いシプレフローラルです。

 『ナイチンゲール』を纏う時「この香りを纏うに相応しい佇まいであるか?」と自問したくなります。と同時に内に秘めた力を引き出してくれるような香りです。
 この力強い梅の香りは、目覚めと出発(たびだち)の時期である春を連想させます。まだ寒い冬の日に、ふと差し込む陽射しのあまりの暖かさに「はっ」とさせられるような…そんな印象です。
 春を告げるうぐいすの美しい鳴き声、開花を待ち蕾を膨らませる梅の花、新芽が顔を出す苔むした土、どれもが「期待」を感じさせます。

 これから生まれ、花開き、実を結んでいく…生命感に溢れた香り。

 香り立ちも持続時間も素晴らしく、私の肌に乗せると、ワンプッシュでしっかりと8時間美しく香ります。 
 スプレー直後にはレモンとベルガモットが弾け、微笑みたくなるような梅の甘い香りが漂い、時間の経過と共に粋な和服を着た艶やかなご婦人が現れるイメージ。その甘さの合間から香るパチョリやサンダルウッド、苔、アンバーにうっとりします。

空に太陽が在る時には、自信に満ちた美しい声で囀るうぐいすのように…空に月が在る時には、見返り美人のように妖艶に…香りのイメージが変化していきます。

「かわいい甘さには抵抗がある」という方に纏って頂きたい香りです。フローラル好きの方にも、シプレ好きの方にもお薦めできます。何か新しい事に挑戦する時、『ナイチンゲール』の力強い香りがあなたを後押ししてくれるでしょう。

香水の世界で活躍する日本人はまだまだ少数です。『ナイチンゲール』は「日本人調香師稲葉智夫氏の作品です」と自信を持って誇れる香水です。『ナイチンゲール』のパワフルな香りは、創り手である稲葉氏の香りに対する「情熱」そのものです。

 物語から香りが生まれ、ボトルとエチケットの美しさに心躍らせ、纏わる思い出がプラスされ…こうして香水は自分だけの特別な一本となるのだと思います。

 『ナイチンゲール』はそのことを、大いに実感させてくれる香りです。

レビュアー 田中 香 Kaori TANAKA 2018年8月

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