La causette parfumée vol.21
『La causette parfumée ラ コゼット パフュメ – 香りのおしゃべり会 』(通称ラコゼ)第21回が2019年2月2日(日)に恵比寿の日仏会館にて開催されました。
まず初めの香水の試香は、日本独特の美の概念「秘める美」を香りに表現した日本発のフレグランスブランド『TOBALI(トバリ)』の二つの香りを取り上げました。1,100年前から香りを芸術として楽しむ文化を持ち続けて来た日本の香りの歴史を紐解き、新たに構築した香りの核「Hidden Japonism 834」を配合した『TOBALI(トバリ)』のそれぞれの香水は、魅力あるテーマを描き出しています。
最初は『SMOKE FLOWER(スモーク フラワー)』です。美貌と知性で当時の権力者を虜にした稀代の花魁、高尾太夫の色気に秘められた静かな知性を、花々と高価な薬草。そして花魁の部屋に焚かれた貴重な香の香りまでを取り入れて表現した調香です。
次に『IRON WIND(アイアン ウィンド)』です。こちらは、戦乱の世に飲み込まれることなく圧倒的強さで未来を切り開いた織田 信長 をテーマに、その強さと情愛を表現した香りです。東大寺正倉院に収蔵されている名香木、蘭奢待を切り取ってその香を聞いたほど、香を愛した英雄の香りは、ウードとイリス、白い波のような刀紋を眼前に表すメタリックな香りで、唯一無二の武将の香りとなりました。
『TOBALI(トバリ)』のボトルや箱の色は、白で統一されています。
日本の伝統的な文化に基づいて選ばれた様々な異なる素材の白で『TOBALI(トバリ)』の世界を形や色、手触りでも表現しています。
さて、この日のラコゼは光栄にも、志野流香道 21世家元継承者の蜂谷 一枝軒 宗苾 様にお越し頂くことが出来ました。まず、私と蜂谷様が最後にお会いした2015年のグラースのユネスコ無形文化遺産登録の円卓会議の時のことについてご紹介しました。その前年に初めてお会いし、翌年にはサロン形式でお話をお聞かせ頂いたのですが、同年秋にグラースの円卓会議でお聞きした時の蜂谷様のお話がずっと心に残り、その後も世界中の教場で海外の皆様に香道をお伝えされている姿を拝見するにつけ、今再びお話をお聞きしたいと切望しておりました。
「伝統芸能という言われ方をすることがありますが、香道は芸能ではありません。香を焚いたからといって拍手をもらうこともありません。ただひたすらに祈るお坊さんに近いのかもしれません。私の父はもうすぐ81歳ですがその父がいまだに、書斎を覗くと、朝から晩までずっとお香を聞いて勉強しているのですね。多分そういうことなんだろうと。」初めから息を呑むようなお話です。
お話は日本の香の歴史についてと続きます。
550年ほど前に京都で生まれた香道、その長い歴史を途切れさせることなく伝えゆくことが使命である父と子の関係についても、語ってくださいます。
そして香木と、香木を取り巻く現代の環境について。貴重なお話に、参加者の皆様も一瞬も蜂谷様から目が離せません。
「香りは儚いですね。ずっと漂っているわけじゃなくて、一瞬でどこかにいってしまいますね。儚さというのが日本の美の一つかなと思います。」
そして特別に蜂谷様のお点前で、その美を、香りを皆で分かち合う聞香を体験させていただけることになりました。
香りの聞き方について、やさしく教えていただいた後、ご参加の皆様も初めて香炉を手に取り、香を聞きます。
海外生活が長い方も、あらためて日本の香りの魅力に対面されます。
初めての経験にまだおぼつかない手元ですが、香木と対面した感動に心は震えます。
活動の一環として、お子様にも香道を体験する機会を作られているそうです。
顔や手に残る移り香。聞香の後にふとした時に香る貴重な宝ものです。
自分の内部(体も精神も)が香りで満たされていく幸せな感覚に浸ります。
「まるで大学時代のように、ノートを取りました」とおっしゃる方も。
3つの香木は、どの香りもとてもあたたかく、包み込まれるような広がりを感じました。お天気や、場所によって、香木は香りが変わるそうです。この日は良い香りだとのこと。
素晴らしいお話と貴重な香りを惜しみなくお伝えくださったことにあらためて感謝致します。
香道が日本の文化遺産として正しく世界に認められる日が来るように、私たちも何か出来ることを探していきましょう。
志野流香道松隠会 公式サイト
http://www.shinoryushoinkai.net/
TOBALI 公式サイト
https://tobali.jp/