review 0018 : シャンゼリゼ / ゲラン
【香水名】シャンゼリゼ / CHAMPS-ÉLYSÉES
【ブランド名】ゲラン / GUERLAIN
【発売年】1996年
【パフューマー】ジャン=ポール・ゲラン / Jean=Paul GUERLAIN
【香りのノート】フローラルフレッシュ
【香りのポイント】ブラックカラント、ミモザ、ライラック、ベンゾイン、バニラ
【レビュー対象製品・価格】オードパルファム 30ml 7500円(本体価格)
※レビュアーが実際に試香した製品のみ記載しています。価格はレビュー当時のものです。
“シャンゼリゼ”と聞いて、真っ先に皆様がイメージされるものは何だろうか?初めて行ったフランス旅行?歴史?老舗カフェ?美術館?誰もが一度はどこかで耳にしたことがあるだろうジョー・ダッサンの曲、 “オー シャンゼリゼ”が流れてくる方もいらっしゃるかもしれない。この陽気な音楽のように香りを奏でるのが、今回ご紹介する『ゲラン』の『シャンゼリゼ』。ご存知の方も多いと思うが、『ゲラン』もシャンゼリゼ通りにメゾンを構える老舗だ。
『ゲラン』のフレグランスには名香と呼ばれるものも多く、『ジッキー』『ミツコ』『シャリマー』『夜間飛行』『サムサラ』等、親やそれ以前の世代から、代々愛用者だという声を聞くことが一番多いブランドではないかと思う。クラシカルで華やか、重厚な品格を感じさせる歴代の香りが揃い、香水の良さを知るためには一度は実際に使っていただきたいものばかりなのだが「ハードルが高い!」と感じられる方も多いだろう。1996年発売の『シャンゼリゼ』は、歴代の香りのクラシカルな品格を継承しつつも、より現代に合った親しみやすい香りだ。
『シャンゼリゼ』のボトルは、非常に特徴的。透明のガラスに金色で印字がされているシンプルな色使いに、上向きの三角形△と下向きの三角形▽を組み合わせたような形で、キャップ部分は八角形を半分にしたような形をしている。ゲラン社の第一線で長年ご活躍された才色兼備の素敵な女性から、幸運にも直接ご教示頂いたのだが、【ボトムの△=ルーブル美術館のルーブル・ピラミッド】・【キャップ=エトワール凱旋門】がそれぞれイメージされていて、ボトルのボトムからトップにかけてシャンゼリゼ通りが広がる象徴的なデザインになっている。そして女性のフォルムもイメージされているそうで、優しさと洗練された美しさを感じるラインだ。ボトルから透けて見える薄い黄金色の香水も、太陽の光のような温かさと優雅さを全体に添えているように思う。
外観から想像したのは、ユリやガーデニアといった白い花々がふんわり甘く香り、朝露のような瑞々しさと儚さを感じるクリーンな香り。
実際の香りはどうか?手首にワンプッシュしてすぐに感じるのは、まだ堅さの残るプラムや甘酸っぱいカシスのような少し酸味のあるフレッシュな香り。そして、ハチミツのようなコクのある甘さと微かに葉のグリーンの青っぽさを感じる清々しいフローラル。次第に酸味が全体の中へ溶け込んでくると、ベビーパウダーのような粉っぽさとミルク感の強いバニラアイスに似た甘さに変化してくる。石鹸のような爽やかさも感じるので、メレンゲの泡のように軽く、ふんわりとした印象の甘さだ。そして、『ゲラン』らしいクラシカルな表情も持ち合わせているので、甘いだけではない上品な大人の女性の香り。
色に例えるなら、透明感のある清楚な白と太陽光のような金色。全て白で統一し、フレアワンピースにキャペリン(女優帽)を被り、ハイヒールで気ままに軽い足取りで歩く女性を金色の光が包み込んでいるイメージが浮かんだ。
パウダリーで少し青っぽい甘い香りの正体は、ミモザ。春に咲く、目が覚めるような鮮やかな黄色の玉房状(ポンポン)の小さな花だ。『シャンゼリゼ』は、このミモザが春の訪れを祝福しているかのような温かさと幸福感で纏う女性を包み込む。『シャンゼリゼ』を一言で表現すると、“光の天使”。何にも縛られず自由に人生を歩もうとする女性を見守ってくれるような、時として背中を押してくれるような、安心感を覚える温かく優しい高潔な香りだ。最初の甘酸っぱさが落ち着いた後は、全体的な香りの印象があまり変わらないので、この点も安心感につながっているのかもしれない。通年で使えそうな香りだが、イメージにぴったりの春か温かさを感じたい冬が合いそうだ。
持続時間は約5時間。朝、両手首にワンプッシュずつした場合、15分ほどで香りが落ち着き丸く優しく香るようになる。4~5時間後には、鼻を手首に近づけるとパウダリーな甘さを感じられる程度に弱まる。個人的には普段は付け直しをしないのだが、『シャンゼリゼ』はタッチアップをお勧めしたい。香りとともに弱まってしまった温かな幸福感が復活し、幸せな気分で一日を過ごせる。
現在(ルーブル・ピラミッド)と過去(エトワール凱旋門)をつなぐシャンゼリゼ通り。その名を冠した『シャンゼリゼ』の香りは、世紀にまたがる老舗ブランド『Guerlain』の品格・プライドを感じさせ、時代の変化に適応する優美なしなやかさを体現する。クラシカルだけれど新しさが欲しい方、上品で優しい香りが好きな方、最近心に温かさが足りないという方には特におすすめ。“光の天使”に見守られ、温かいHappyな気持ちで日々を過ごせるはず。
レビュアー 新咲 清香 Kiyoka NIISAKI 2018年2月